【政権ビジョン】「競争力ある福祉国家」中間とりまとめ
競争力ある福祉国家
― 安心が挑戦を生み、挑戦が未来をつくる ―
はじめに
私たちは、誰もが自分の人生を切り拓ける社会をつくりたい。社会に希望を広げたい。不条理を正したい。理不尽と戦いたい。格差を縮小したい。誰もが未来に希望を持てる日本を築きたい。
一人ひとりが安心して学び、働き、挑戦し、自らの人生を選択できる社会。その一人ひとりの力が十分に発揮される社会こそ、日本の競争力の源になると私たちは信じています。
しかし、我が国はいま、大きな岐路に立っています。
戦後の復興、高度経済成長、人口増加を前提として築かれてきた日本社会は、いま大きな転換点を迎えています。人口減少、超高齢社会、AIをはじめとする技術革新、気候変動、国際秩序や安全保障環境の変化。世界のどの国も経験したことのない課題が同時に押し寄せ、日本はその最前線に立っています。
一方で、人口が増え続けることを前提として築かれた社会の仕組みは、こうした時代の変化に十分対応できているとは言えません。将来への不安、地域の担い手不足、子育てや介護の負担、働き方や暮らし方の変化など、多くの課題が重なり合い、従来の延長線上では乗り越えることが難しくなっています。
この転換期こそ、日本を新しく作り直す好機です。
課題は、国民にあるのではありません。制度改革の遅れです。未来を切り拓く責任は政治にあります。だから私たちは、政治の責任として、新しい成熟国家モデルを提示します。
人口減少を衰退として受け止めるのではなく、成熟国家への転換として捉える。福祉か成長か、都市か地方か、開放か保守か――そうした二者択一を乗り越え、対立ではなく包摂によって答えを導く。それが、私たちの目指す中道政治です。
本ビジョンは、中道政治が目指す新しい国家像を示すものです。人口減少時代においても、一人ひとりが安心して暮らし、挑戦し、その力を社会全体の活力へとつなげていく。その実現に向けた国家ビジョンとして、私たちは「競争力ある福祉国家」を提案します。
序章 「競争力ある福祉国家」とは
「競争力ある福祉国家」とは、人への投資によって、一人ひとりの自由と可能性を広げ、その積み重ねと循環を通じ、社会の安心と経済の競争力を高める国家です。
私たちは、「成長か福祉か」という古い対立を乗り越えます。福祉は、成長の成果を分配するためだけのものではありません。教育、子育て、医療、介護、住宅、雇用、学び直しなど、人への投資そのものが、新たな成長を生み出します。
福祉は、単なるコストではありません。誰もが安心して学び、働き、人生を選択し、挑戦できる社会を支える基盤であり、未来への投資です。だからこそ、私たちは、「支える福祉」から「可能性を広げる福祉」へと発想を転換します。
また、私たちが求める競争は、勝者と敗者を生み出すための競争ではありません。公正なルールのもとで、一人ひとりが能力や個性を発揮し、新しい価値を生み出す、人を生かす競争です。
安心があるから挑戦できる。挑戦が新しい価値を生み、その成果が再び人への投資となって、新たな安心につながる。この「希望の循環」こそが、「競争力ある福祉国家」の基本理念です。人口減少時代だからこそ、一人ひとりの力が日本の力になります。
私たちは、この新しい成熟国家モデルを通じて、日本を「課題先進国」から「課題解決先進国」へと発展させていきます。
第1章 人への投資は、最大の成長戦略
「安心があるから、人は挑戦できる。」
成熟国家最大の資源は「人」です。私たち国民一人ひとりです。教育、子育て、医療、介護、年金、住宅。社会保障は未来への投資です。
安心が消費を支え、公正な労働移動を支え、挑戦を支える。そして、社会保障は内需を支え、経済成長を生みます。社会的投資は最も確実な国家投資です。
さらに福祉は人を守るだけではありません。一人ひとりの可能性を広げ、自らの人生を選び、挑戦できる社会を支える基盤です。「支える福祉」から「可能性を広げる福祉」へ。私たちが目指すのは、「ポジティブ・ウェルフェア(可能性を広げる福祉)」です。
誰もが安心して人生設計を描き、自らの可能性に挑戦できる社会基盤を整えます。そのことが、結婚や子育てを、希望を持って選択できる社会につながり、人口減少・少子化という成熟国家最大の課題を乗り越える力になります。
第2章 成長力と競争力を再構築する
「競争力は、人を生かし切る力。」
成熟国家にも成長は必要です。私たちは、一人当たりの生産性、付加価値、知識集約度を高め、人への投資を通じて持続的な成長を実現します。
私たちは、外需を積極的に取り込みます。無秩序な開放でも、排他的な保護主義でもありません。人材、知識、技術、交流を広げる「秩序ある開放」を進めます。AI、半導体、ロボット、医療技術、環境技術、コンテンツ、文化産業など、高付加価値分野で世界市場を切り拓きます。同時に、技術は人手不足や医療・教育格差などの社会課題を解決するために活用し、成長と社会的価値を両立させます。
加えて、金融・資本市場の競争力を高めます。家計金融資産が成長投資へ向かう仕組みを整え、資産運用、スタートアップ投資、長期投資を促進します。透明で信頼される市場環境を整備し、日本の金融センター機能を強化します。
同時に、積極的労働市場政策を抜本的に強化します。誰もが安心して挑戦し、成長分野へ円滑に移行できるよう、リスキリング、職業訓練、キャリア形成支援、就労支援を一体的に推進します。雇用を守るだけではなく、新たな仕事への挑戦を後押しする「人への投資」を強化します。あわせて、会社法・労働法制を総合的に見直し、労働分配率を高めるとともに、持続的な賃金上昇を実現します。成長の成果が働く人へ着実に還元される経済を築きます。
第3章 教育立国、人づくり国家へ
「人づくりこそ、国づくり。」
成熟国家の競争力の源泉は、人づくりです。教育は未来への最も確かな投資であり、一人ひとりの可能性を最大に引き出し、日本の未来を切り拓く力です。
私たちは、教育格差が人生格差にならない社会を実現します。すべての子どもが、家庭の経済状況や生まれ育った環境にかかわらず、自らの可能性を伸ばし、夢に挑戦できる社会を築きます。
教育を、国づくりの基盤に据えます。幼児教育から高等教育まで、誰もが質の高い教育を受けられる環境を整えるとともに、一人ひとりの個性や能力を伸ばす教育を進めます。学力だけでなく、自己肯定感や他者と協働する力、自ら考え挑戦する力を育み、子どもたちのウェルビーイングを教育の土台とします。不登校や障がい、日本語支援が必要な子どもなど、多様な背景を持つ子ども一人ひとりに寄り添い、それぞれの力を伸ばす教育を充実させます。
教育は、学校だけで担うものではありません。家庭、地域、企業、大学など、多様な主体が連携し、社会全体で子どもの成長を支える仕組みを築きます。教員が子どもと向き合う時間を確保できるよう、働き方改革や処遇改善を進めるとともに、多様な専門職が学校を支える体制を充実させます。
そして学びは、子どもだけのものではありません。人生100年時代にふさわしく、誰もが学び続け、新たな知識や技能を身に付け、人生の転機にも挑戦できる社会を実現します。
第4章 食料・エネルギー国産化を国家プロジェクトへ
「国富の循環を国内で。」
食料とエネルギーは、安全保障であり、最大の経済政策です。私たちは、食料とエネルギーの国産化を国家プロジェクトとして進め、海外へ流出する国富を国内で循環させます。地域に雇用と投資を生み、日本の成長力を高めます。
食料安全保障を強化するため、農地や生産基盤を守り、担い手の育成、スマート農林水産業の推進、重要な農業資材の安定確保を進めます。生産から流通まで持続可能な食料供給体制を構築し、若い世代が希望を持てる農林水産業を育てます。
そしてエネルギーについては、2050年を見据え、再生可能エネルギー・次世代エネルギーを中心とする社会へ移行します。太陽光、地熱、洋上風力、小水力、バイオマスに加え、森林や海洋資源など地域資源を最大限に生かします。
第5章 国土再設計と森林・海洋国家戦略
「守る国土から、育てる国土へ。」
人口減少、気候変動、激甚化する災害、インフラの老朽化など、新しい時代に対応するため、100年先を見据え、国土を再設計します。
道路、橋梁、上下水道などの社会資本は、人口減少やデジタル化、脱炭素など新たな時代にふさわしい姿へ計画的に再構築します。同時に、防災・減災機能を高めるとともに、流域治水やグリーンインフラなど自然の力も生かし、災害に強い、持続可能な国土を築きます。
あわせて、人口減少社会に対応し、医療、教育、交通、防災、農業、エネルギーなど、暮らしを支える生活機能を持続可能な形で維持・再配置する国土づくりを進めます。地域の実情に応じた拠点形成とネットワークを充実させ、誰もが安心して暮らし続けられる国土を築きます。
また、森林資源、造林、水資源管理を国家戦略へ格上げするとともに、海洋エネルギー、水産資源、港湾・物流、海洋研究などを一体的に推進し、世界有数の海洋空間と広大な森林という日本の強みを最大限に生かします。
国土への投資は、地域に仕事を生み、新たな産業を育て、防災力を高め、次の世代へ豊かな国土を引き継ぐ未来への投資です。私たちは、国土を守るだけでなく、新しい時代にふさわしい価値を育み、未来へつないでいきます。
第6章 東京一極集中から多極分散国家へ
「住みたい街で未来を描ける国をつくる。」
これまでの日本は、地方が育てた若者や人材、活力が東京へ一方向に集まる構造が続いてきました。その結果、地域では人口減少や担い手不足が進み、東京でも過密や住宅・子育ての負担など、新たな課題が生じています。
私たちが目指すのは、東京か地方かという二者択一ではなく、それぞれの地域が強みを生かし、自立して発展する多極分散国家です。
地方は未来をつくる主体です。地域医療、介護、教育、子育て、住宅、交通、デジタルなど、暮らしを支える基盤を充実させます。遠隔医療やオンライン教育などデジタル技術を活用し、住む場所による機会の格差を縮小するとともに、地方大学や研究機関を知と人材育成の拠点として強化します。
また、地域の中小企業、農林水産業、観光、文化など、それぞれの特色を生かした高付加価値産業を育て、地域に質の高い仕事を創出します。あわせて、テレワークや二地域居住、副業・兼業など、多様な働き方・暮らし方を後押しし、「仕事に合わせて住む」のではなく、「住みたい場所で働き、挑戦できる社会」を実現します。
第7章 希望の世代間循環と次世代投資
「次世代への投資が未来を創る。」
超高齢社会に必要なのは、世代間の対立ではなく、支えあいを基盤とした「希望の世代間循環」です。「支える側」と「支えられる側」を固定するのではなく、誰もが人生のさまざまな場面で支え、支えられながら、それぞれの役割を果たせる社会を築きます。
高齢世代が培ってきた経験や知恵を次の世代へ受け継ぎ、若い世代が将来に希望を持てる社会を実現します。こうした支えあいの循環を次世代への投資につなげるため、本人の意思に基づく寄附や社会貢献、資産の円滑な承継なども含め、子ども・若者など次世代を安定的に支える「若者みらい特定財源(仮称)」の創設を検討します。
重点投資は三本柱です。
第一は、次世代人材投資。教育、高等教育、奨学支援、学び直し、子育て、住まいへの支援、起業支援を強化します。
第二は、食料・エネルギー国産化投資。農業、地域エネルギー、森林・海洋資源、再生可能エネルギーへ投資し、地域経済と国家競争力を強化します。
第三は、安心して暮らし、働き続けられる社会基盤への投資。特に介護を重点分野と位置づけ、介護人材の確保、処遇改善、介護DX、地域包括ケアを抜本的に強化し、介護離職を防止します。介護体制の充実は、高齢者のためだけではなく、介護を担う現役世代や子育て世代を支え、世代を越えた支えあいの基盤となります。そして、日本が培ってきた介護や社会保障の知見を世界へ発信し、超高齢社会を「負担」ではなく、「希望」と「成長」の源泉へと転換していきます。
第8章 平和で民主的な国際秩序と世界への貢献
「世界の課題先進国から、世界の課題解決先進国へ。」
人口減少、超高齢社会、気候変動、格差の拡大、技術革新。世界が直面する課題を、日本は世界に先駆けて経験しています。だからこそ、日本には、自らの経験を世界の課題解決へ生かしていく責任があります。
日本の強みは、経済力だけではありません。文化、科学技術、教育、食文化、地域社会、そして長年にわたって築いてきた国際的な信頼は、世界に誇る日本のソフトパワーです。こうした強みを生かし、人と人、国と国をつなぐ架け橋として、平和で持続可能な世界の実現に貢献します。
私たちは、対立や分断ではなく、平和、民主主義、人権、法の支配という普遍的価値を基盤に、多国間協調を重視する国際秩序を目指します。我が国の平和と繁栄も、こうした価値と国際秩序の上に成り立っています。
その上で、対話と協調を外交の基本としながら、国民の命と暮らしを守るため、現実に立脚した安全保障政策を進めます。日米同盟を基軸に、同志国や友好国との連携を強化し、自由で開かれた国際秩序を支えていきます。専守防衛を基本とし、憲法の理念と国際法を踏まえながら、抑止力と対処力を着実に高め、国民の生命・財産、領土・領海・領空を守り抜きます。
同時に、日本が培ってきた人口減少への対応、超高齢社会、防災、医療、介護、地域共生などの知見を世界と共有し、世界が直面する課題の解決に積極的に貢献します。私たちは、「課題先進国」で終わるのではなく、「課題解決先進国」を目指します。
核軍縮・不拡散、人道支援、平和構築、気候変動対策などにも積極的に取り組み、国際社会とともに世界の平和と持続可能な発展に貢献します。
第9章 自由・人権・民主主義をアップデートする
「守るだけでなく、広げる。」
成熟国家とは、一人ひとりの自由と尊厳が守られ、広がる国です。私たちは、人権を守るだけでなく、その実現をさらに前へ進めます。性別、年齢、障がい、家庭環境、地域、経済状況などによって人生の可能性が左右される社会を変えます。格差の固定化を防ぎ、多様な生き方を尊重し、誰もが挑戦できる社会を築きます。
そして憲法についても、受け身ではなく積極的に提案します。立憲主義と憲法の基本原理を堅持した上で、国民の自由と権利をさらに充実させるとともに、国民の権利保障や自衛隊の憲法上の位置付けなど、これまで国会で積み重ねられてきた議論を踏まえ、責任ある憲法改正論議を深めます。
あわせて、デジタル時代におけるプライバシー権、知る権利、情報アクセス権、教育を受ける権利、将来世代への責任、地方自治のあり方、統治機構改革や解散権のあり方など、時代にふさわしい民主主義の姿を国民の皆さまとともに考えていきます。
第10章 国会改革と政策決定改革
「国会を変え、未来を変える。」
どれほど優れた政策があっても、それを実現する政治が変わらなければ、未来は変わりません。政治は国民の未来をつくるためにあります。人口減少、超高齢社会、安全保障、気候変動など、いま直面する課題は、一つの政党だけで解決できるものではありません。だからこそ、対立を目的とする政治から、政策を競い、熟議を重ねる政治へ転換します。
国会は、与野党が勝敗を競う場ではなく、国民の未来を議論する場です。政策立案機能と行政監視機能を強化するとともに、国会のデジタル化を進め、AIやデータも活用しながら、より開かれた国会を実現します。
政治への信頼を取り戻すため、政治資金の透明性を徹底し、「政治とカネ」の問題に終止符を打ちます。不正を防ぐ第三者機関を構築し、公正で信頼される政治を実現します。企業・団体献金についても、国民の信頼を第一に、そのあり方を不断に見直します。
また、経験や慣例ではなく、科学的根拠と現場の知見に基づく政策形成を徹底します。EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)を推進するとともに、政策は立案して終わりではなく、検証し、改善し続ける政策評価の仕組みを定着させます。
人口減少や社会保障、教育、エネルギーなど将来世代に関わる課題については、超党派で長期的な国家戦略を議論する仕組みを充実させます。
さらに、民意をより的確に反映する選挙制度改革や国民参加型の政策形成を進めるとともに、政党も透明性、ガバナンス、政策立案能力を高め、国民に開かれた組織へ改革します。
むすびに
課題は、悲観の理由ではありません。挑戦の理由です。
人口減少を、人類最先端の成熟国家モデルへ。
安心が挑戦を生み、挑戦が成長を生み、成長が次世代を支える。
私たちは、この「希望の循環」を日本中に取り戻します。
本ビジョンは、そのための出発点です。国民の皆さまとの対話を重ねながら政策を磨き上げ、その実現を支える持続可能な財源についても責任ある議論を進めます。そして、政策と財源を一体で示す政権公約へと発展させていきます。