【衆院本会議】「『抜け道』が多く、冤罪被害者及びその御家族に寄り添う内容となっていない」平林晃議員が反対討論

20260616衆院本会議で反対討論に立つ平林晃議員

 衆院本会議で6月16日、平林晃議員が「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」に対し、政府提出法案に反対の立場から討論を行いました。討論後採決が行われ、与党と参政党などの賛成多数で可決し、参院に送付されました。予定原稿は以下のとおりです。

「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」に対する討論

令和8年6月16日
中道改革連合・無所属 平林晃

 中道改革連合・無所属の平林晃です。会派を代表し、「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」の政府提出案に反対、中道改革連合・チームみらい・日本共産党提出の対案、衆法第9号に賛成の立場から討論を行います。

 冤罪は、被害者やその御家族の人生を大きく狂わせ、時にはその生命をも奪いかねない国家による究極の人権侵害であり、この冤罪を救済する唯一の方法が再審制度です。法的安定性の重要性は言うまでもありませんが、一定の重大な瑕疵があった場合には、三審制の下で確定した有罪判決であっても是正することは当然であります。そして、憲法の理念に照らしても、無辜の救済が迅速かつ確実に行われなければならないことは言うまでもありません。

 現行の刑事訴訟法が施行されてから77年。この間、通常審で死刑が確定し、再審により無罪となった方は5名もいらっしゃるのです。もし執行されていれば取り返しはつきません。
 冤罪被害者の救済には、これまで多くの年月を要してきました。袴田巌さんは逮捕から再審無罪を勝ち取るまで58年、半世紀以上を経なければなりませんでした。今この瞬間も、塀の中で、正に光の見えない中、再審無罪を勝ち取ろうと戦っている人もいる。どうしてこんなに時間がかかるのでしょうか。 再審請求審において、検察官が無罪に繋がる証拠を出し渋り、ようやく裁判所で再審開始が決定されても、検察官が不服を申立てる。これが長年にわたり機械的、形式的に繰り返されてきたことは紛れもない事実です。 この立法事実を、立法府、そして我々国会議員の一人ひとりが重く受け止めなければなりません。そして冤罪で苦しまれた被害者と御家族の声に、真摯に耳を傾け、再審法の改正につなげなければなりません。
 問題は冤罪事件に止まりません。プレサンス事件や大川原化工機事件における捜査機関の過度な取調べをめぐり、いわゆる人質司法の問題も指摘されています。また佐賀県警科捜研職員によるDNA型鑑定の不正問題をめぐっては、科学捜査の根幹を揺るがす極めて深刻な事態を招いています。にも関わらず警察は、第三者による検証を全く受け入れようとしていません。刑事司法への国民の信頼は完全に失墜しています。

 こうした深刻な事態を憂慮し、半数以上の国会議員が超党派で参加して、「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」が発足されました。同議連では、再審制度の不備を是正すべく真摯に議論を重ね、令和7年5月、冤罪被害者救済のための要綱案を取りまとめました。検察官保管証拠等の開示命令、再審開始決定に対する検察官の不服申立ての全面禁止など、正に冤罪被害者の気持ちに寄り添い、冤罪を生まないための内容となっています。 この議連の動きに突き動かされるかのように政府は、再審制度についての諮問を法制審議会に行いました。ところが、法制審の学者委員6名の中には、再審研究の専門家が1人も含まれておらず、再審制度の課題に真正面から向き合う構成となっているのかなど、多くの疑問が指摘されました。
 その上で、本年2月に法務大臣に提出された法制審議会の答申は、冤罪被害者の気持ちに寄り添うどころか、「検察官の、検察官による、検察官のため」の改正案となっておりました。

 すなわち、再審開始決定に対する検察官の不服申立てもこれまで通り認め、いわゆる証拠開示の制度についても、再審請求者本人に証拠を直接開示せず、裁判所に提出される証拠の範囲もこれまでの証拠開示の運用よりも狭まる恐れがあるなど、議連案潰しのための諮問であったことは明らかです。法制審議会総会の採決では4名もの委員が反対するという異例の事態になりました。

 法制審議会の答申を基に作成された政府案に対して、3月から自民党内で議論が交わされましたが、心ある議員の理解を得られはずもなく、激論になったのは当然です。法務省も激しく抵抗する中、3度の修正を経て、政府案が国会に提出されたのは、期限から一月も遅れた5月15日でした。

 提出された政府案は、法制審答申が認めていた検察官による不服申立てを原則禁止することとしたものの、十分な根拠がある場合には不服申立てを行う余地を残すものです。証拠提出命令制度については、現行法の運用よりも証拠開示が後退する恐れがあるどころか、提出された証拠の目的外使用を禁ずるなど、冤罪被害者の支援を困難にし、報道の自由に縛りをかける内容となっていました。これでは、冤罪被害者に寄り添い、国民の強い不信を払拭するものには到底なりえません。

 被害者のプライバシーに十分配慮するのは当然です。しかし、証拠が支援者やメディアの目にとまることによって、多くの事件において無辜の救済へとつながってきたことも事実です。よって、証拠の目的外使用の一律禁止には強く反対致します。

 私たち中道改革連合は、超党派議連が取りまとめた要綱案を踏まえ、幅広い証拠開示、検察官の不服申立てを全面禁止する内容の「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」を対案として、今国会に提出いたしました。本来であれば、この法案こそ、賛成多数で可決すべきであります。

 法務委員会における20時間以上の議論を通じて明らかになったことは、国民の不信に応えようとしない法務省の姿勢です。証拠を再審請求者に対して直接開示することに後ろ向きであるどころか、検察官が保有する証拠の一覧表ですら再審請求者への開示を拒む姿勢に、反省の色は全く見られませんでした。 検察官の不服申立てを例外的に認める「十分な根拠」については、自民党の審査において政府が十分な説明を行わなかったため、検察官の「行為規範」でしかないことが委員会審議で初めて明らかになるなど、法務・検察当局への不信がさらに深まる結果となってしまいました。

 袴田巌さんの姉ひで子さんは、6月9日の参考人質疑でこうおっしゃいました。「良い証拠も悪い証拠も全部出して裁判をやっていただきたい」、「抜け道のないように御検討いただきたい」。さらに、我々国会議員に対して「神様が作った法律ではございません。人間が作った法律を、人間として改正していただきたい」とも訴えられました。

 こうした思いに応えるために、立法府が今なすべきことは、立法事実に基づいた規律を明確に制度化することであり、検察の運用に委ねるような法改正ではありません。しかし政府案は、検察官のための「抜け道」をなお数多く残し、冤罪被害者及びその御家族に寄り添う内容となっていません。 よって我々は、政府提出法案に反対し、中道改革連合・チームみらい・日本共産党提出の対案、衆法第9号に賛成することを強く申し上げ、私の討論といたします。

20260616衆院本会議で反対討論に立つ平林晃議員

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